非日常ブログ

始らなかったけど終わる話



「…もう、やめようか」
ぽつりと呟かれた言葉が、煙草の煙に紛れた。
「…何を？」
分かっていたけど、思わず聞き返した。
信じたく、なかったから。
こちらを振り向いて目を合わせる彼から、逃げ出したくなる。
「この関係を」
耳を塞いで、声を聞かずにいたい。
「終わらせよう」
好きだった手も、今だけは。
「…ごめんな」
目を伏せて、煙草を深く吸い込む。
泣きそうなのを、メンソールのせいにして誤魔化す。
「酷い人ね」
そう言えば、彼も一度深く煙草を吸う。
「貴方の煙草にも、慣れてきたのにね」
責めるつもりが、無いわけじゃなくて。
でも、責めきれる自信がなくて。
お互いに煙草を吸いながら、無言でただ俯く。
言葉が、見つからない。
「…好きだったのよ、この関係」
ぽつりと呟けば、頭を撫でられる。
自分より年下の彼にそうされるのが、たまらなく好きだった。
ちがう、今も好きなんだと。
「終わる関係だって、分かってたのにね」
所詮代替だったんだ。終わること前提の、叶わないこと前提の。
そんな生産性のない関係。
「貴方の作る料理、結構好きだったのよ」
拗ねたようにいえば、彼はまた、ごめん。と呟く。
謝らないでほしいのに。
「全部、終わりなの…？」
未練がましいと、自分でも思う。
でも、諦め切れなくて、まだ一緒にいたくて。
煙草を灰皿に押し付けて、部屋を出て行こうとする彼の背中に言葉を投げる。
「…終わろう。俺じゃ、幸せには…出来ないから」
その言葉が何よりも痛かった。
私の幸せを願うのなら、側にいて欲しい。
けれど、自分でちゃんと分かってるからいえない。
「…そう」
だから、だからせめて泣かないように、彼に悟られないように。
「なら、せいぜい貴方のホントに好きな人を、幸せになさい」
彼に背を向けて、二本目の煙草に火をつけて。
「…じゃあね」
それだけ言って、思いっきり煙を吸い込む。
「…じゃあな」
一言だけ返ってきた言葉とドアの閉まる音。
大丈夫、泣かない。まだ、泣けない。
そう自分に言い聞かせてリアルじゃない喪失感を、煙にまぜて吐き出して
少しだけ残る、彼の煙草の匂いをかき消した。




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うん、ラルフ先生と誰かの話。
アダルティにしてみたかったんだ。失恋だよ。
ムカイトルネタだよ。

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