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非日常ブログ

煙草擬人化・オリジナルのイラストブログ。
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はずかししにそう
夕暮れの町の中に、葬列の奏でる音楽が響く。
粛々と進む葬列の主は、何も語らない。
小高い丘の上の木の下で、一人の少年が座ってそれをみている。
何の感情も示さない瞳に、夕日が映り込む。
眩しそうに目を細めて、少年が丘を降りようとすると
「こんにちは」
赤い影が、彼に話しかけた。
「……誰ですか?」
少年が訝しげに、影に聞いた。
「僕の名前は、暁」
影は、人懐っこい笑みを浮かべて答えた。
少年は、今度は不思議そうに暁と名乗った影を見た。
「僕に何の用事ですか?」
暁が、微笑みを深くして答える。
「君、毎日この丘にいるだろう?毎日毎日、ここで何をしているのか気になったんだ。」
「何もしてないよ」
すぐに、少年が答えた。
疲れきったような声で、少年が語り始める。
「僕は、重い病気にかかっているらしい。両親も医者も病名は教えてくれない。まぁ、きっと聞いたところで何もわからないけどね。僕がわかってるのは、いつ死んでもおかしくないってことだけ。毎日毎日病院に行っては、今日死ぬ。と、言われ続けてきた。けど、そういわれ続けてもう随分たつけど、僕は毎日生きている。死ぬはずの毎日を生きている。いや……死にぞこなっているんだ。神様に、ずっと“おまけの一日”を、与えられて生きてるんだ……全ての人に……両親にさえも見捨てられて……」
少年は、ここまで言ってため息をついた。
一気に捲し立てたせいか、青白い頬は赤く染まり肩で息をしている。
暁が、ようやく口を開く。
「そう、それが君の鍵なんだね……」
その声はあまりに小さかったので、少年には聞こえていなかった。
「ねえ、君。もしも……もしもの話だよ?その“おまけの一日”が、神様から与えられたものじゃなくて、自分の能力、特殊能力みたいなものだったらどうする?」
少年が、不思議そうな顔をして暁を見る。
暁は、さらに続ける。
「そして、その能力を使いこなすためには名前をつけなければいけないとしたら、君はどんな名前をつける?直感で答えて。」
少年は、暁の顔を一度見て少し考えてから、その名前を口にした。
「そうだな……“Yesterday Once More”かな?」
暁は、それを聞くと微笑んで腰の鍵束から鍵を一つ取り少年に投げ渡す。
「これを君にあげる。きっと……君の“Yesterday Once More”の役に立つよ」
そういい残して、暁は夕日に溶けるように去っていった。
あとには、少年と鍵だけが残された。
その次の日、少年はまた丘の上に来ていた。
今日は、葬列の音楽は流れてこない。
風が吹く音だけが聞こえている。
少年は、大きな木の下に腰を下ろした。
風と下の世界の雑音が混ざった音に耳を傾ける。
ふと、その中に歌声が混ざった。
かわいらしい少女の歌声。
決してうまいわけではない、陳腐なラブソングだったけれど、少年の耳にそれは心地よく響いた。
その声は、段々と丘の上に近づいてきているようだった。
少年は、この声の主に会ってみたいと思いそのまま座っていた。
やがて、木の近くに人の気配がして歌声がやんだ。
「あら?先客さんがいたのね」
歌声と同じ声。
少年が、声のほうを向くとかわいらしい笑顔を浮かべた少女が立っていた。
「こんにちは。私、雪って言うの。隣、いいかな?」
少年は、すぐに頷いた。
雪は、少年の隣に座った。
「ここ、気持ちいいね。あなたは、毎日ここにいるの?」
雪のその言葉に、少年は昨日暁に話した内容と同じような内容を話した。
「そう……大変なんだね。でも大丈夫、きっといいことがあるよ!」
雪は、にっこりと微笑んだ。
「私もね、色々あって今はお母さんと二人っきり。でもね、最悪な状況って絶対長くは続かないの。最悪の後には、もう上がるしかないから。だから、何が大丈夫なのかわかんないけど……きっと大丈夫だよ」
そう言って、もう一度笑った。
少年は、雪の言葉を聞いて少しだけ心が軽くなった気がした。
明るい彼女の笑顔は、温かく少年の心に届いた。
それから毎日、少年と雪は丘の上の木の下で会うようになった。
会って特に何かするわけでも無い。
ただ会って話をするだけで、少年は幸せになれた。
雪にあうたびに、少年は彼女に惹かれていった。
彼女に会うために今まで自分は生きていたのだと思った。
彼女と会うためにこれからも生きたいと思えるようになった。
彼女といられるなら“おまけの一日”も悪くないと思えるようになった。
そうして、少年と雪は親睦を深めていった。
そんなある日、世界中に一つのニュースが伝わった。
それは、『近日中に隕石が衝突する』という嘘のようなニュースだった。
科学者たちが手を尽くしても、回避はできないらしい。
そのニュースは、当然少年たちの耳にも入った。
やがて、世界中の全ての放送が世界消滅へのカウントダウンを始めた。
多くの人々は、カウントが終わるまでの時間を愛する人と過ごそうと思い、愛する人の下へ旅立った。
雪は、丘で少年といると言い張ったが、少年は母親のところへ行くように促した。
きっと、母親のほうが雪のことを心配しているだろうから。
雪は、泣きながら母親の元へと向かっていった。
少年は、また一人になった。
けれど、少年は寂しくは無かった。
死の恐怖にも、一人きりでいることにも馴れていたから。
むしろ、少年は幸せだった。
自分のことを思ってくれる人がいて死ねるのだ。
自分は大切な人を思い浮かべて死ねるのだ。
孤独だった少年にとっては、最高の幸せだった。
地球の終わりの日、少年は木の下でぼんやりと空を眺めていた。
空は、不気味に赤く染まっていた。
少年は、そういえば暁と名乗る人に会ったのも空の赤いときだったと思い出す。
そして、あの日から何となく首からぶら下げていた鍵を取り出した。
その鍵には、いつの間にか“Yesterday Once More”と、彫られていた。
「“Yesterday Once More”……“昨日をもう一度”か……」
ふと、何かが引っかかった。
「“昨日”……そうか、そうだったんだ……」
心の中で何かがはずれた気がした。
ふいに少年は笑い出した。
死の絶望に狂った笑いではなく、希望を持った歓喜の笑いだった。
「そうか……“おまけの一日”なんかじゃなかったんだ……」
少年は、暁の言葉を思い出していた。
「確かに……役に立つみたいだね。」
少年はゆっくりと鍵を宙に向ける。
どうすればいいのかはもうわかっていた。
少年の瞳には、一つの迷いも無かった。
「“おまけの一日”?違う……僕は進んでなんかいなかったんだ。ずっと同じところにいただけなんだ……」
ゆっくりと鍵の先に光が集まってくるのがわかる。
「僕はただ……病気の進行を“昨日”に戻していただけなんだ。」
光が、時計と鍵穴の形を作る。
反対にまわる時計の針が、ぴたりと止まった。
「僕が無意識に戻していた時間は一日……でも、一日じゃ何も出来ない。」
少年は、時計の針に手を伸ばす。
光で出来ているはずの針に触れる。
「なら、何をすればいいか?そんなの決まってる。」
そして、針を勢い良く反対に回した。
「一週間?一ヶ月?いいや……もっと……!」
少年は針を回し続ける。
体中が痛み出すが、それでも彼は回し続けた。
やがて、彼は倒れた。
口からは血が流れ出ている。
そんな状態で彼は笑った。
「あぁ……僕はなんて幸せなんだろう……」
力を振り絞って鍵穴に鍵を差し込む。
「こんな体でも、彼女を助けることが出来る。人を救うことが出来る。」
ゆっくりと鍵をひねる。
カチャリと音がして、鍵穴から光が溢れ出る。
鍵穴と時計も光へ戻り、一陣の帯となって空へ伸びていく。
そして、空は赤から黄金色に一瞬だけ変わり、すぐに青空へと変わった。
「これで……もう……」
そして、少年は意識を失った。
その顔は、とても幸福に満ちた笑顔だった。
丘の下の町がざわめき始めて、科学者たちが隕石が消えたことを発表したころ
「……驚いたよ」
暁が、丘へやってきた。
そして、倒れた少年の首筋に手を当てる。
もう、脈はない。
「まさか、隕石に対して能力を使うなんてね……」
少年の首から手を離し、暁は立ち上がる。
そして、遠く離れていった隕石を見るように、空を見上げる。
「ずいぶんと無茶をしたね。今度あれが来るのは、だいぶ先になりそうだ」
そう言ってため息をついてから、少年の手から鍵を取る。
時計のレリーフの彫られた美しい鍵だった。
「かなり綺麗な鍵になったね」
きらきらと輝く金色の鍵を夕日にかざす。
「こんなに綺麗な鍵は久々だな……」
暁がその鍵を鍵束に戻そうとすると、丘の下から少年を呼ぶ声がした。
雪が、ここに戻ってきたらしい。
暁は、その声を聞いて鍵をもう一度見た。
そして、大きなため息をついた。
「もったいないけど……まあ、たまには偽善もいいかもね」
それに、歌も聴けるしね。と、呟いてから、鍵を少年の心臓へと落とした。
鍵はゆっくりと少年へと溶け込んでいった。






少年は、悲しそうな歌声で目を覚ました。
泣きながら歌われるその歌は、あの日聞いた陳腐なラブソング。
歌っているのは……
「雪……」
大粒の涙を流しながら、自分を膝枕して歌う彼女の頬にそっと触れる。
「よかった……死んじゃったのかって……思ったよ……」
少年は起き上がって、雪を抱きしめた。
「大丈夫……僕は死なないよ。」
少年は笑った。
「最悪の後には、あがるしかないんだろう?僕は、もう最悪まで行ってきたから、二人であがろう?」
その言葉を聞いて、雪は笑った。
「うん。一緒に行こう!」
そして、雪はまた歌いだした。
それは、はじめに聞いたときよりもさっき聞いたときよりもとても綺麗な歌声だった。

拍手[0回]

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無題
目から何かが出てきました。
シン 2010/01/17(Sun)16:16:31 編集
無題
それはきっとコンタクトがずれたのです。
暖かいお絞りをのせて、しっかり目を休ませてください。
向井 2010/01/18(Mon)23:40:02 編集
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